Women’s Prestige Yatsugatake

文: Mari Yano | 写真: Kazuhiro Watanabe | Date:
Film by: Daisuke Kitayama

晴れた日の八ヶ岳はいつも想像したより清々しい。
久しぶりに帰って食べる実家の近所のコロッケはいつも想像したより美味しい。
長いこと会ってなかった学生時代の友人に会うといつも想像したよりしっくりくる。
今回のWomen’s Prestigeは想像したよりずっと楽しいものだった。

今年中にリベンジのチャンスがやってくるなんて。春、完走できなかった小国でのRapha Gentlemen’s Raceのイメージと恐怖感があった。
今回は日本初の女性だけのWomen’s Prestige。
ルートは110kmと短かめだけど内容は小国と変わらずタフ。どっかんと2000mを越える峠、2400mの獲得標高、後半に散りばめられたグラベルロード(砂利道)。

小さな頃、同級生の男の子達が自転車に乗って公園にサッカーをしに集まって、そのまま自転車で競争してはしゃいでいたのを思い出す。
チンプンカンプンな自転車パーツについて何時間も笑いながら語り合う男性達が、いつも大勢周りにいて、
今でもなんとなく、自転車(乗り物)は男のもの、なんていう印象がある。
だから、女性だけの、Women’s Prestigeがまったくどんなものか想像できなかった。
カフェにいくための、通勤するための、そういう理由がない、そしてハードでタフで時にはスリリングなサイクリングを、
仲間で挑戦しようという女性が一体、日本にどのくらいいるのか皆目、想像がつかなかったから。

スタート時の緊張感の理由は、遅くて迷惑をかけたらどうしよう、落車で怪我、メカトラになったらどうしようっていう3つ。
上りも平地も下りも、ほかのメンバーに比べて遅い私、それは自分の脚力だから仕方がない。でも他のみんなの実際の気持ちはどうなんだろう。それでも焦って自分の力以上を出そうとすると確実に後半もたなくなるので、マイペースに走るしかない。そしてチームメイトを信用すること。


早朝のスタートを切ってすぐ、濃霧の野辺山。迷う。…五里霧中。鹿やリスにばんばん会いながら走る。
雨。やっぱりRaphaライドはこうでなくては!
道路脇に生える鮮やかな苔やきのこ、路面に落ちている葉が水滴音を増倍させ激しく聞こえる。深い濡れた森の中でいくら登ってもまだまだ残りがある峠道に寂しさを感じる。ひとり。いつもは避けて通る民家だが他の参加者の気配すらない森をながく走っていると人恋しくなってくる。

38km地点でやっとほっとする。標高2127mの麦草峠に到着したからほっとするというよりはチェックポイントのスタッフと会えたことにほっとした。まだ3分の1の距離しか走ってないが麦草峠を越せばなんとかなるだろうと、Gentlemen’s Raceで完走できなかったわだかまりがほぐれていった。


この雨と霧のコンディションの中で20kmの長い下りがこれほどにもストレスになるとは予測していなかった。体温は確実に奪われていき、コーナー毎に慎重になりすぎて体中の筋肉がりきむ。スイッチバック、深い霧と濡れた路面、落葉。ブレーキをかけすぎないようにしてるけど、スイッチバックではどうしても手と肩に力がはいり、じきにガマンできないほど手が痛くなる。止まり、手をグー・パー、グー・パーとしては走り出し、また止まる……滑らないように、滑らないように。大きな峠の後の下りは天国のようなものと想像していた予想は外れてしまった。


標高1000mは下っただろうか?山の天候と女の気分は変わりやすい、とは言う男の人がいるのものわからないではない。八ヶ岳の南はどっかーんと開き、青空と夏のような雲が広がっていた。眩しいくらいの黄金色の田んぼ。揺れている可憐なコスモス。下ってきた八ヶ岳を見上げて、まだ上を走っている仲間達にこの様子をなんとかして伝えてあげたいと思った。もうちょっとがんばって、と。


太陽の下、比較的平坦で、淡々としたペース。気持ちが落ち着いたときのサイクリングは快適そのもの。

そして!グラベル。ルートの後半には峠は無いがグラベルロードが散りばめられている。砂利粒も色々、斜度も色々、大きな水たまりがあったり、粗かったり、泥で滑ったり、あるところはクマザサけもの道!あのバラエティに富んだグラベルセクションは本当に「想像したより」手強く、ずっと面白かった!
どんなトレイルもよっしゃこいのメンバー達にならって、ガシガシ果敢にペダルを踏んだ。
チーム名のRockhopperz!はイワトビペンギンという意味。名前負けしないでグラベルに臨めたと思う。
グラベルからようやく抜けると世界一スムーズな舗装路が待っているというのに、まだゴールしたくない気持ちでいっぱいになる。

今回は小国で組んだ千春子とWomen’s 100で一緒に走った綾と私の3人チーム。
そしてスタート以外をずっと共に走った、姉チーム(3dots)、小国で一緒だった、ちゅなどんとにゃおちと、初めましての、あゆか。どのチームもそうであったかもしれないけど、その通り!気心の知れたチームメイト。ずっとずっと喋りっぱなし、笑いっぱなしが夜遅くまで続いた。Women’s Prestigeのフィニッシュラインが終わりなのではない。この日が終わって寝るのが惜しかった。

私の脚力を知る信頼できるチームメイトがいるってすごい。
私が無理しても、調子がよくなくても、すぐに気付くだろう、だからマイペースでいいのだという安心感以上の精神安定剤はないと思う。
そんな、愉快な仲間達のおかげで、スタートの不安はどこへやら、「想像していたより」たやすくゴールできてしまった。

そして、「想像していたより」大勢の、そして「想像していたより」強くエネルギッシュな女性サイクリスト。出会ったどのチームもきらきらと笑顔だった。

自転車は男性だけのものではないのだ。

Special thanks:
八ヶ岳にこんなに集まるとは思っていなかったこんなにたくさんの女性たち。チームメイトだけじゃなく八ヶ岳まで来てくれたすべての仲間達にありがとうと言いたい。

そして念入りにコースを作り、中には徹夜で準備をし、チェックポイントのために何週間も前からプランを練っていたスタッフの方々ありがとうございました。

親から離れた所でふたりの子どもを育てている母である私が、このイベントに参加するにあたっていつもより色んな人にお世話になりました。無事に走り切ることができて私の宝物がひとつ増えました。

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