タオ・ゲオゲガン・ハート

文章: Tom Southam | 日付:

タオ・ゲオゲガン・ハートは私の度肝を抜いた。ロンドンのショップ、コンドールサイクルズで初めて会って、当時15歳だった彼が私に近寄ってきて、私のキャリア、プロレース、UKレース、彼のレース、バイク、キット、トレーニング等々、バイクレースについてのあらゆることを情熱的に話しかけてきた時から。彼は私を驚かせた。なぜなら彼は私が会ったことのある15歳の誰よりも自信家だったから。

tao-04
バイクに乗っていない時でも伺える彼の自然な自信は、バイクに乗ればより明確になるが、最近のツアー・オブ・カリフォルニアでの彼の活躍を見れば、その意味がわかるというもの。そしてこれは、歴代のイギリス人ライダーの誰一人にも無かったこと。少なくとも最近までは、礼儀正しい敗者の国だったイギリスにとって、この自信に満ち野心に溢れる若いライダーの登場は、大きな衝撃だ。

昨年私は、このイギリスの若きエースの一人が持つ才能がどんなものか見るため、ジローナへ向かったのだった。そこではRaphaのモデルも経験しているタオが、アメリカのU23チームBissellのウェアでエリートレースに臨む初めてのシーズンに備えていた。

 

トム・サウザム:今年(2014年)、ジュニアからエリートになりましたね。上の年齢カテゴリーに上がったことで、またゼロからのスタートという感じがしているのでは?

タオ・ゲオゲガンハート:僕がこれまで積み上げてきた実績に、大した価値はないと思っています。僕のオリンピック・デブロップメント・プログラムのコーチ、マット・ウィンストンも断固としていつもそう言います。長いスパンで見れば、ジュニアのワールドチャンピオンというのは全く意味のないことです。ジュニアとエリートの両方でタイトルを持っている選手は、ただ一人グレッグ・レモンしかいないということはご存知でしたか?

Tao-Interview-02
トム:これからがとても楽しみのは間違いないね。

そうですね、でも、いつも何かの始まりなんです。ジュニアのスタートがあって、パリ〜ルーベを経験して、そして世界選手権とヨーロッパ選手権。一つ一つが新しいステップの積み重ねなだけです。コンピューターゲームと一緒で、次のレベルに進めば、難易度も上がり、距離も長くなり、自分も力をつけないといけない。ベッドルームに写真を貼っていたような有名選手と一緒に走れるようになったら、突如としてあと1ヶ月くらいで彼らと「レースができる」ことに気がつくのです。

そうだね、今や君はもう53T×11Tのギアを使うことができる。もう一人前だね。

そうなんです。“まだ18歳だから” なんてことはもう言えない。レースが始まればどんな言い訳も通用しません。

どんなプロになりたいか、イメージはある?

ある意味、どうしたいかはすごくハッキリしてるんです。でも同時に、その過程ではいろいろと変化があるので、柔軟でいる必要もありますね。昨年にはいくつかの異なった選択肢があり、今はこのチームに所属すると決断したことでその選択肢の幅も狭まってきました。そしてこういったことがスケジュールを決定していくので、その中で自分の得意なことを見つけていければと思います。ジュニアとは違うので。パリ〜ルーベのU23では上手くやりたいと思っていますが、現状ではまだ難しく、もっと様々なレースをハッキリと決めていかなくてはいけません。(訳注:彼はジュニアで過去に3位に入っている)

歴代の選手達のキャリアは、君の選択に影響を与えている?

もちろんです。彼らは可能性を見せてくれましたから。僕の近所では他にはバイクレースで結果を出している人がほとんどいない中で、ウィギンズはロンドン人としてツールで優勝した。それは、誰でも彼でも大きなバイクレースで勝利できるヨークシャーとも、どの街にもクラシックで優勝者がいるベルギーともまるで意味が異なります。

Tao-Interview-05
以前のイギリスでは、どうせできない。どうせ二流のサイクリストだ。という様な風潮があったけれど、君の世代では、何ができることなのかわかっているという有利さがあるね。

イギリスのサイクリングは、足跡が本当にハッキリしているんです。私がセレクションチームに所属した時は、ピーター・ケニュックが他の選手達から頭角を表し始める中、システムを通してあらゆることを学びました。最初のセレクションチームのミーティングでは、一つ一つ何が可能かのプレゼンテーションがパワーポイントで行われましたよ。

それは興味深いことだね。しかも君達の世代は、本当にいろいろなことが整ったら、最初の潔癖なレーサーとしてレースをするだけでなく、キャリアの殆どの期間でドーピングしてきた選手達と戦うということさえ考えないレーサになるということになる。

そうですね、でも自分の身の回りのことに関する限りでは、そういったことでストレスを感じたことはありません。なぜならそれは、僕にコントロールできる問題ではないからです。もし周りの人が何をしているのかを気にし出したら、自分がダメになってしまいます。同時に、プロのスポーツ界ではもうそういったことがなくなってきているのは素晴らしいことです。サイクリングは本当に過酷だということは知っていますが、若手としてこのスポーツについていろいろ知っていることはありがたいことです。オリンピック・デヴェロップメント・プログラムと100%MEというイギリスの先駆的なアンチドーピング機関のアンチドーピングのセミナーも受け、全ての情報を学びました。

Tao-Interview-04
ここでは誰と一緒にライドしているの?

マット・ブラマイアーとが多いですね。あとはエリック・ローウェル、ダン・マーティン、ポール・ヴォス、デイビッド・ミラー、クリスチャン・メイアーです。私は自分のプログラムに忠実なので、2〜3時間彼らと一緒にやった後、他の時間は自分のことをしたりすることもあります。特に一人暮らしをしている場合なら、最初の時間をグループで一緒にやるというのはとても意味のあることです。

Tao-Interview-03
彼らがどうやっているのかを直に見ることができるのは本当に素晴らしいことだね。

彼らからは毎回のライドで何かしら得ることがあるんです。彼らは全員素晴らしいライダーなのに、その内の何人かのリラックス加減には驚きます。そんな彼らは、雨が降れば、“OK、休みにしよう” という具合ですから。

もちろん良い環境、正しい場所にいることがタオに良い影響を与えていることは間違いないが、やはり彼の才能が彼らプロサイクリスト達の切磋琢磨の中へと彼を導いている。翌朝、彼と一緒に朝食をとったが、タオがライドの準備をしていなかったことに驚いた。“完全に自転車を休む日が必要だったんです”と、彼は言う。厳しいトレーニングが続いた日々の後は、やはり常識が勝るもの。私はそれをメモに残した。それは、才能でもなく、決断力でもなく、仕事への姿勢と倫理、成功への渇望よりも、こういった休息日が将来のタオに必要な役割を持つと思ったからにほかならない。

「時間が経つのがすごく早く感じる」と、近ごろ口にしているね。すごく頑張っていると思うけれど、パーセンテージで言うと、今はU23のキャリアのどの辺りまで来ていると思う?

僕は毎日、最大限ベストを尽くしています。まるでダメな日もありますが、どうすることもできません。でも、僕は物事が擦り抜けていくことを許しません。昨年の始め、スケジュールをよく見た時に、実際にビッグチームに注目してもらえるチャンスのあるUCIレースや、ネーションズ・カップ等々、一年中を通して20前後のレースがありました。スプリント、タイムトライアル、純粋に登りだけの様な日は勝つことができると思いましたが、何かが出来る機会だと思えたのは、一年を通して10にも満たない数のことでした。

昨年からのトレーニングで変わったことはある?

量が増えたことですが、まだ高強度のものはあまりやっていません。20分運動を1〜2回と、何回かのテスト、サブスレッシュホールドをいくつかやっただけでしょうか。基本的に長時間サドルの上にいますが、とても科学的にやっていて、気に入っています。“トレーニング量と成長のペース”を確認しながらの、こうした科学的なトレーニングのことなので、やり過ぎるということはありません。

君のその成功への決断力はどこからくるのだろうか?

決まり文句ですが、両親の背中を見てきました。父はとても勤勉です。彼は大工で54歳で、終わらせなければいけない仕事は、必ず終わらせます。彼が仕事に注ぐ時間は恐ろしい程です。だから僕は、いつも自分が一番でなければ気が済まないと思うのです。お金が欲しければ、外へ出て、何かできることをします。そういう性格です。

君は何に向かっているのだろう、究極のゴールはどこにある?

良いキャリアを重ねて、プロの間でも尊敬されるようになりたいです。そしてもちろん、もし可能ならば、もしそのレベルに到達できればですが大きなレースで優勝したい。リエージュ出身のライダー達の目標は、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで優勝したいと思っている中、ベルギー人達はフランドルやパリ〜ルーベに熱を上げています。僕にとってはそれは全て異国のスポーツというだけで、ただいい走りがしたい、それだけです。

僕はとても計画的なので、常に次のステップを見据えています。ヒルクライム時のヘアピンカーブの様に、ずっと上にある頂上を見据えてはいますが、それぞれのヘアピンではコーナーに集中し、次から次へとこなしていくのを楽しんでいます。

[このインタビューは、タオがBissell Development Teamでの最初のシーズンの準備をしていた2014年1月に行われたものです。このチームは今年、Axeon Cycling Teamとしてサーキットを走ります]

Tao-Interview-06

インタビューの後に

タオ・ゲオゲガン・ハート

今僕は、このインタビューの最後の言葉にあるヘアピンカーブの先に行っていると考えられています。もちろんあれから一年が経ち、いくつかより強くなった部分もありますし、賢くなった部分はあります。しかし、私が学んだ一番大切な教訓は、「ゴールポストは常に動いている」ということです。以前も “ビデオゲーム” のようにと言ったのと同じような言い回しになりますが。

しかし、サイクリングは本当にオキシモロン(矛盾語法)の良い例です。あなたが強いのか、弱いのか、速いのか、フィッターなのかを見るのは簡単なのに、増え続けているレースに身を置けば、そういう特徴は一瞬で関係なくなってしまいます。僕は本当にヘアピンから前進しているのか?時々、本当は後退してるのではないかと思います。

歳を取るにつれ、人生はより大変になると思います。新しいアパートに入ること、請求書、その他より多くの責任がのしかかってきます。学校を卒業してまだ18ヶ月も経ちませんが、誰もこれら全てのこと、特に外国でどうすればいいのかを教えてはくれませんでした。

この一年は、もちろんアップ&ダウンの多い一年でした。名前をいくつか上げれば、カリフォルニアやユタ、ツール・ド・ラヴニールやツアー・オブ・ブリテンなど、いくつかの素晴らしいレースに参加しました。寝室に飾ってある自分のアイドル達ともレースで競いました。本当に畏怖の念の中にいました。そして成長もし、ゆっくりとではありますが、彼らのレベルに近づくことができる。と確信を持ち始めています。

トムが僕の自信に満ちあふれた様子について書いたときには、その実態よりも大げさになっていました。ツアー・オブ・ブリテンで自分の左に、自分の歳の倍以上のツール・ド・フランスの優勝者がいたら?自信なんてどこかに引っ込んじゃいますよ。本当です。

しかしその上で、そんなことは大したことではないので、究極的には僕は何も変わっていないと思います。猛烈にペダルを漕ぎ、レースに生き、新しいことをやるだけです。

 

シェアする